「宗教新聞」紙 2009年10月20日号


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数え90歳にして世界の現場で活動していることは驚きだが

その広がりが興味深い

 

 世界基督教統一神霊協会(統一教会)の創立者である著者が、数え90歳にして世界の現場で活動していることは驚きだが、その広がりが興味深い。ルネサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロは、その多彩な活躍から「万能人」と呼ばれるが、宗教を基盤に国際高速道路のような公共事業にまで乗り出すのには、空海のようなスケールを感じる。その原点が、16歳で出会ったイエス・キリストにあることから考えると、イエスが生涯を全うしていたら同じような展開をしたかもしれない。

 

 1920年に著者が生まれたのは、儒教文化に包まれた韓国北部の農家。独立運動をしていた牧師の叔父の影響で、著者が10歳の時、一家はキリスト教に改宗する。また、中学生が自殺した新聞記事を読み、3日間泣き通したという。そうした精神環境が著者を宗教的探求に向かわせ、深い祈りの中でイエスと出会うのである。  1941年に初めて日本に渡り、早稲田高等工学校電気工学科に入学した著者は、聖書を学びながら、それ以上に社会の底辺の人たちから人間のあり様を学ぶ。独立運動にも加わったため警察に逮捕・拷問されながら、生涯の友と出会う。43年に卒業し、韓国に帰った頃、宗教的真理は確信に到達する。そして光復(終戦)直後、ソ連支配下の平壌で布教活動を始めた。

 

 著者の教えは多くの信徒を得ていくが、やがて既成のキリスト教会と政府から迫害されるようになる。それは、信仰を原点に生活協同組合など幅広い社会事業を展開した賀川豊彦が、神秘体験を率直に語ったためにプロテスタント教会から批判されたのに似ている。新興宗教はそうやって鍛えられるのだろう。

 

 自叙伝なので割り引いて読む必要はあるが、著者の活動と日本での評価のギャップは大き過ぎる。特に著者が生涯の課題として取り組んでいる韓半島の平和統一は、日本の平和にも深く関わる問題であり、もっと関心を持つ必要があるのではないか。金日成との会談など実にスリリングで、やがて歴史のエピソードとして語られるのだろう。