社会人の部 佳作(1)


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蕩減完成愛としての怨讐愛と世界平和の実現

(社会人の部:佳作)

 佐藤博文

 

一、あらゆる現実問題の根本解決

 

(1)平和の前提条件

 「平和をつくり出す人たちはさいわいである、かれらは神の子と呼ばれるであろう」と新約聖書マタイによる福音書第5章9節に書かれている。平和というものは、ただ祈ったり願ったりするだけでは決して実現するものではなく、また誰にでもできるというものでもない。人類愛、知的能力、意志力・行動力において、神の子といわれるだけの傑出した内容を持つ人が現れ、あらゆる困難や反対・迫害をも克服しつつ、現実の諸問題を根本から解決しながら、具体的に作り上げていかなければ、平和というものは決して実現できるものではないということである。

 

 ここで言う「平和」とは「戦争のない状態」ではなく、あらゆる現実問題が解決された上に、自由や喜びに満ち、価値の実現された状態のことを言う。つまり、平和を実現するための前提条件はあらゆる現実問題の解決であるということである。飢餓、貧困、差別、不自由、不法等の現実問題があるところでは決して平和はありえないからである。

 

(2)今までの人間の努力の限界

 人類は平和世界実現の為、有史以来不断の努力を傾けてきた。多くの宗教家や聖人等が現れ、愛や慈悲や仁が説かれ実践されてきた。また多くの思想家や政治家が現れ、様々な思想が説かれ実践され、また戦争を防止し平和を構築する為に多くの法律や条約が制定され様々な国際的な機構も設立されてきた。

 

 代表的な宗教であるキリスト教においても、「神の愛」が説かれ、人類の恒久平和や神の国実現が指向されてきた。一方、共産主義も、私有財産の国有化や革命により人間社会からあらゆる矛盾性や貧困や差別をなくし、自由、平等、平和な理想世界を標榜してきた。

 

 しかし、これらのあらゆる試みにも拘わらず、未だに現実問題が根本的に解決されておらず、その結果平和な世界は実現されていないのが偽らざる現状である。結果的に見て、既存の宗教や思想や政治や平和運動は、平和世界実現に対して限界があり無力であったと言うことができる。

 

(3)無力化の原因と根本解決の道

 それらが無力化した原因は、平和の理想は掲げることはできたとしても、理想実現のための理念やその実践力に問題や限界があったのである。既存宗教の実態を見ても「神の愛」「慈悲」等を唱えては来たが、現実問題を根本から解決できるような「真の愛」「神様の愛」ということのできる次元の愛を現わすことができなかったということができる。

 

 したがって、真に世界平和を実現しようとすれば、まず「愛」の次元や質を高めることを根本におき、思想・理念・ビジョンにおいても過去のあらゆるものを越えるものに再構築し、組織や運動形態も再編し、既存の平和運動を根底から凌駕するものを新たに作り上げるところから出発しなければならない。

 

 ここでは、思想や組織や運動形態のこと論じることは控え、「愛」の質を吟味することに焦点を絞り、「真の愛」や「神様の愛」ということの真の意味を明らかにし、それと世界平和との関係性を明確にすることで、世界平和を確実に実現することができる道を提示することにする。

 

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